【美術館】サンアンヘルの隠れた名建築「Museo Casa del Risco(カサ・デル・リスコ)」と植民地時代の至宝たち

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メキシコシティ南部・サンアンヘル地区を歩いていると、石畳とブーゲンビリアに囲まれた静かな広場「サン・ハシント広場」にたどり着きます。

その広場で、ひときわ存在感を放っているのが「Museo Casa del Risco(カサ・デル・リスコ美術館)」

ここは単なる美術館ではありません。18世紀の貴族邸宅、植民地時代の歴史、革命期の知識人、そしてメキシコを代表する美術コレクションが融合した、“サンアンヘルそのもの”を象徴する文化遺産です。

目次

サンアンヘルを象徴する邸宅「Casa del Risco(カサ・デル・リスコ)」とは?

Museo Casa del Risco は、18世紀の歴史的邸宅を利用した美術館です。現在は「イシドロ・ファベラ文化センター」として運営されており、政治家・外交官・知識人であったイシドロ・ファベラが、収集した美術品や建物そのものを1958年にメキシコ国民へ寄贈したことで誕生しました。

この建物自体は植民地時代から存在しており、サンアンヘルの歴史と切り離せない存在です。

圧倒的存在感。「リスコの噴水」は必見

この美術館最大の見どころが、中庭にある「Fuente del Risco(リスコの噴水)」です。正直、この噴水を見るだけでもここに入館する価値があります。

噴水全体には、タラベラ焼き、中国磁器、貝殻、鏡、陶器の破片、装飾タイルなどが異常な密度で埋め込まれており、まるで巨大なコラージュ作品のよう。「Risco(リスコ)」とは“陶器の破片”や“岩・崖”を意味する言葉で、この館名の由来にもなっています。

特に面白いのは、ヨーロッパ・アジア・メキシコ文化が混ざり合っていること。中国磁器まで使われているのは、当時のメキシコが「マニラ・ガレオン貿易」によってアジアと深く繋がっていた名残です。

贅を尽くした館内コレクション:18世紀の上流階級の暮らし

館内に一歩足を踏み入れると、イシドロ・ファベラ夫妻が情熱を注いで集めたヨーロッパや新スペイン(旧メキシコ)の最高峰の美術品が出迎えてくれます。

① 植民地時代の静謐なダイニングルーム

館内でも特に印象的だったのが、こちらのダイニングルーム。

豪華でありながら、どこか静か。メキシコの植民地文化にある「富を見せびらかすより、格式を漂わせる美学」が非常によく伝わってくる、時間が止まったかのような空間です。

18世紀の貴族の暮らしをそのまま再現したダイニングルーム。格式高い食器と重厚な家具が静かに並ぶ。

② 至高の工芸品「ヴァルゲーニョ(高級木製キャビネット)」

展示のなかでもひときわ目を引くのが、当時の職人技が凝縮された工芸家具、ヴァルゲーニョ(Barguño / 万能机・キャビネット)です。

一つは、深い色合いの木材に眩いばかりの金色の彫刻や緻密な彫像が施された贅沢な逸品。そしてもう一つは、フラップ扉を開くと、アイボリー(象牙)調の板に細密な彫版画がびっしりと施された引き出しが現れる引き出し付きキャビネットです。

金色の彫刻と細密な彫像が施された贅沢な木製キャビネット。当時の職人技の粋が集結している。

象牙調の板に細密な版画が施された引き出し付きのキャビネット(ヴァルゲーニョ)。貴族の宝物を守るための芸術品。

これらは当時の貴族たちが重要な書類や宝物を保管するために設えたもので、現代の私たちが見てもその洗練された美しさに圧倒されます。

③ 聖母マリアと宗教美術の傑作

カトリック信仰が深く根付いたメキシコの歴史を物語るように、素晴らしい宗教絵画の数々も並びます。

幼子キリストを抱く高貴な聖母マリアの直立像。キリストの磔刑を中心に、天界と地上、そして救済の物語がドラマチックに描かれた緻密な宗教画。当時の人々にとっての「絵画」が、いかに重要であったかが伝わってきます。

④ 「主人・婦人・愛人」?肖像画に隠された物語

個人的にかなり惹かれたのが、こちらの3枚並んだ肖像画の展示です。

中央の男性、その左右に並ぶ女性。館内では、これらが「主人・婦人・愛人」を表しているとも解説されることがあり、非常に興味深い展示です。

植民地時代の肖像画は単なる顔写真代わりではなく、財力、家柄、権力、宗教性、家族関係などを視覚的に示すものでした。館内を歩いていると、「この家にはどんな人間ドラマがあったのだろう」と想像が膨らみます。

イシドロ・ファベラとは何者?

美しい中庭の緑のなかに、この館を現在の形で残した人物、イシドロ・ファベラ(Isidro Fabela)のブロンズ像があります。

彼は革命期から活躍した政治家・外交官であり、国際法学者としても高名な人物。単なる富豪ではなく、「文化を未来へ残す」という強い思想を持っていました。

そのため、自身のコレクションだけでなく、書籍、写真資料、家具、絵画、歴史文書などを含め、邸宅ごとメキシコ国民へ寄贈しました。

セットで巡りたい!目の前に佇む「サン・ハシント教会」

カサ・デル・リスコ美術館を訪れたら、必ずセットで立ち寄りたいのが、広場を挟んで目の前にある「サン・ハシント教会(Templo y Ex Convento de San Jacinto)」です。

① 石造りの重厚なファザード

この教会は16世紀、ドミニコ会によって建設された非常に古い宗教施設であり、サンアンヘルの発展の原点とも言える場所です。

外観は火山岩(テソントレ)や川石を組み合わせた、メキシコのコロニアル様式らしい武骨で重厚な佇まい。ピンクがかった漆喰の剥がれ具合が、積み重ねられた長い歳月を感じさせます。

② 眩いばかりの黄金の祭壇(レタブロ)

一歩中へ入ると、外観の控えめさからは想像もつかない、眩いばかりの黄金の主祭壇(レタブロ)が目に飛び込んできます。

チュリゲラ様式(ウルトラ・バロック)を彷彿とさせる、緻密で立体的な彫刻が施された木製の黄金祭壇。現在でも地元の人々の信仰の場であり、ミサや祈りが捧げられています。

③ 静寂に包まれた美しい庭園

教会の敷地内には、手入れの行き届いた美しい緑豊かな庭園が広がっています。

石造りの洗礼台(または噴水)の背後には、歴史的な石造りの十字架(アトリオの十字架)が静かに佇んでいます。

緑のツタが這う壁の前には、聖母マリア像のインカント(小さな祠)もあり、散策するだけ楽しめます。

サンアンヘルの落ち着いた上品な空気感は、まさにこの修道院がもたらした歴史文化がベースになっているのだと肌で実感できます。

Museo Casa del Risco 基本情報

項目内容
施設名Museo Casa del Risco(カサ・デル・リスコ美術館)
場所サンアンヘル地区(Plaza San Jacinto 15)
アクセスメトロバス:1号線「La Bombilla」または「Doctor Gálvez」駅から徒歩約10分。
入場料無料
営業時間火〜日 10:00〜17:00(月曜休館)
所要時間美術館+向かいの教会合わせて:1時間半〜2時間

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